腫瘍(癌)について②

○今回は、比較的多く見られる良性腫瘍をお話していきます。


比較的多く見られる良性腫瘍には、
 パピローマ、マイボーム腺腫、エプリス、
 肛門周囲腺腫などがあります。

パピローマとは?そして原因は?

まず パピローマですが、犬は、イボのできやすい動物です。
ある日、ワンちゃんを撫でていたら今まで何もなかったところに急にイボを発見したということは、よくあることです。初めて、イボを見つけた時は、多くの方が、驚いて診察に来られます。
皆さんは、パピローマウィルス(皮膚乳頭腫)と言う言葉を聞かれたことが、あるでしょうか?このイボは、そのパピローマウィルスが、原因で起こる病気です。
1センチ以下のイボについては、このパピローマウィルスに感染する事で、起こる良性腫瘍の可能性が、大きいです。
みるみる大きくなったり、出血したり、痛みが出たりしなければ、様子を見ていて大丈夫です。
パピローマウィルスは、数百種類の様々な型があります。
様子を見ていると消えてしまう物もありますが、高齢になってからできたものは、ワンちゃんの皮膚の抵抗力が、弱まって感染しているので、消えずに残ってしまうことが、多いです。
処置としては、手術をして取り除くしかありません。局所麻酔または、全身麻酔が、必要になります。
取り除いても、その場所または、近くの場所にまたできてしまうことは、良くありますので、かかりつけの獣医さんに相談してください。

人に感染することは?予防法は?

パピローマウィルスは、ウィルスによって起こる病気ですが、皮膚にイボができる他は、特に症状は、ありません。
犬から人に。または、人から犬に感染する事は、ないと言われていますので、安心してください。
特にこれといった予防法は、ありません。イボに気がついた時は、様子をみながら獣医さんに相談してみてください。


マイボーム腺腫?

続いてマイボーム腺腫について、説明します。
「ワンちゃんの瞼にポツンとイボのような物ができてしまった。」と驚いて来院される方が、よくいらっしゃいます。
「これは、マイボーム腺腫といって良性の腫瘍です。」と説明します。
マイボーム腺というのは、瞼の縁にぐるっとある細胞群をいいます。瞼の縁、まつ毛の毛穴に沿って、転々と存在しています。
マイボーム腺は、瞬きするたびに目の表面の油分を補って目の潤いを保つ役割を持っています。
油分を分泌する細胞には、良くある事ですが、この腺の出口が、詰まってしまうことによって、中に油分が、溜まってしまいイボのように膨らんでしまいます。この状態をマイボーム腺腫といいます。
人間のニキビと同じような物と思ってください。
あまり大きくならず、目の外側に膨らんでいる場合は、様子を見ていても良いと思いますが、瞼の内側や、瞬きするごとに眼の表面(角膜)をこするようだと手術をして、取り除いてあげることになります。


マイボーム腺腫の治療法は?予防法は?

治療法としては、手術になります。
目の周囲を手術しますので、全身麻酔が、必要になります。
マイボーム腺腫は、人間のニキビと同様に体質があり、繰り返しできてしまうワンちゃんも多いです。
残念ながらこれといった予防は、ありません。
たいへんですが、見つける度に対策する必要があります。
あくまでも体質ですが、日常の生活によってできやすい傾向もあるので、再発を繰り返す場合は、食事や体重管理などの見直しも検討すると良いでしょう。


ハグキにできるエプリスとは?

次にエプリスについてお話しましょう。
エプリスとは、口の中、主にハグキにできる腫瘍のひとつです。
犬では、比較的発生が多くみられます。
歯の周りで歯を支える靭帯から発生する歯肉の良性腫瘍です。
線維性、骨性、棘(きょく)細胞性などに分類されます。
犬で最も多く見られるものは、線維性エプリスです。
主な症状は、
歯肉に盛り上がったような物ができる。
口臭が、強くなる。
唾液に血が混じる。
食べにくそうにする。
などが、みられます。
7歳を超えて、高齢になってくると発生しやすいです。
それから、エプリスは、良性の腫瘍ではありますが、腫瘍の広がりや動きは、一般的な良性腫瘍よりも活発です。注意してください。

エプリスの原因、予防法、治療法は?

エプリスの原因については、はっきりわかっていません。
残念ながら、これといった予防法もありません。
エプリスの治療としては、転移が報告されていない良性の腫瘍なので、発生した場所で腫瘍を切除する事をお勧めします。
様子を見ていても良いとは、思いますが、似たような形を示す悪性の腫瘍で、扁平上皮癌や黒色肉腫(メラノーマ)という病気があります。
これらとの鑑別は、必要と思われます。


肛門周囲腺腫とは?

次に肛門周囲腺腫について、説明します。
これは、肛門周囲にある、肛門周囲腺が、腫瘍化したもので、良性の腫瘍に分類されます。
肛門周囲にできる腫瘍は、この腫瘍のことが、多いです。
腫瘍そのものは、痛みを起こすことはないので、気が付いたらできていたということが多いです。
先程も言ったように良性腫瘍に分類されますが、ゆるやかに大きくなっていくことが、あります。犬が、気にして舐めたり、腫瘍から出血したり、感染が、起こったりします。
腫瘍は、ひとつだけのこともあれば、いくつもできることもあります。

肛門周囲腺腫の原因は?

原因について、詳しくは、わかっていませんが、発生には、男性ホルモンが、影響しているようです。
そのため、去勢手術をしていない高齢のワンちゃんで、発生が多く見られ、雌ではまれです。

治療法は?

やはり手術で取り除くしかありません。
男性ホルモンが、影響しているので、同時に去勢手術も併せて行なうと、再発をかなり抑えることができます。
できれば、若いうちに去勢手術をしてしまえば、この病気にかかることは、ほとんどありません。
肛門周囲腺腫以外の悪性腫瘍もできている場合もあるので、取り除いた腫瘍は、病理検査を行うことをお勧めしています。


まとめ

今回は、比較的発生の多い良性腫瘍について、説明しました。
良性腫瘍の場合は、悪性腫瘍と違って、様子をみていても、すぐに命に関わるようなことは、ほとんどありません。
その点では、安心といえますが、良性とは、言っても、その場で大きくなっていくものもあるので、大きさには、注意しておいてください。
少しずつでも、大きくなっていくようなら、獣医さんに相談してください。
治療としては、手術をして、取り除く以外に良い方法が、ありません。
手術をするのなら、早い方が、良いと思います。
高齢だったり他の病気を併発している時は、麻酔を心配される方も多いと思います。
こんな時は、獣医さんと良く相談してください。